正しいものだけが美しいわけではないし、美しいものが正しいわけでもない。
何かひとつ、自分の中に強い枠組みを設けることは、前に進むための大きな力になるけれど、
同時に相反する価値基準やありえたかもしれない可能性を不可視にしてしまう。
芸術とジェンダーについて考える時、
いつも三島由紀夫の小説「女神」の冒頭が頭を過ぎる。
ひとつではだめだ、ふたつ揃ってようやく人間だ、いや、ふたつでも足らない、たくさんの目が必要なのだ。
今わたしの目は、着物を纏った女を、この瞬間を生きている生身の人間の女を捉え見ることができているのだろうか。